用事が終わって別れようとすると駅まで誘われた。「自転車貸すから!乗っていいから!」と言う。僕のである。オクサマの自転車が故障しているので僕のを貸したのだ。オクサマは時々恩を売りつける振りをして僕を引っ掛けるのだ。なんと言う小悪魔だろう。だまされない、と僕は心に誓った。だが誓いを守ることとオクサマに逆らうことは優先順位において天と地ほどの差がある。
オクサマは楽しそうに「いやー、言ってみるもんだね。駅まで得した気分!」と見事僕を誘うことに成功し喜んでいた。
そして道中「いっしょに行くと駅までの道のりが短くていいよね」「でもダンナチンは駅まで行ったら一人徒歩でとぼとぼ帰るんだ。オクサマだけがおいしい。くくく」と笑う。僕がせめてもの抵抗を見せる為、用がなくなった男はこうやって捨てるんだね、と拗ねた振りをすると「君は乙女か」と呆れられた。
そして「だめだよ、ダンナチンが乙女化すると、いじめたくなっちゃうだろ?そうするとオクサマがどんどんオヤジ化するから困るんだよ!」と叫んだ。